インドネシア バリ島に行ってきました②

ここから先は、僕が今感じていることについてつらつらと。

今まさに僕が即興演奏で向き合っているもののひとつに、「手つき」というキーワードを描いています。これは、即興の感覚として自分の中から自然と出てくる身体感覚(リズム感やハーモニー感も含めて)を自覚し始めたからです。

自身の音楽遍歴と関わってくる部分もあるので詳しくは割愛しますが、音楽の好き嫌いではなくて、自分の中からいわゆるJazzのインプロが「自然と」出てくることはほんとに少なくて、特にブルースは皆無に近い。それを無理やり出す環境になってしまうと、嘘をついた自分の演奏になってしまって嫌気がさすこととか結構あります。中でも「オリジナルをやるならまずはスタンダードがきっちりしてからでしょう」と仰る方はたくさんいますし、アンサンブルとして非常に魅力的なので僕も好きです。でも、それはアフリカン・アメリカの伝統「Jazz」をやるならばの話だと理解していますし、それを「オリジナルをやる人」と一括りにして適用するのもナンセンスな話だと思います(オリジナルとは何かっていう話はまた置いといて)。最初の方は特に演奏場所やメンバーがジャズの人が多かったし、自分も何となくそっちの方を頑張ろうとか思ったわけですが、どこかで「やっぱりここじゃない」となるわけです。でも自分の中から出てくるものが「何か」がわからない状態が続いていました。

自分がハーモニーの中にふつうに三和音を使って即興したりするので、「全部楽譜に書いているんじゃないか」と言われたこともあったし、いわゆるフリーの即興ではないし、民族的な即興ではないし、かといってジャズではないときたら、どう説明したらよいかすごく困るのですが、確かに「何か」があるのを確信していて、はっとりくんには「ありそうでなかった音楽」と言われたときにはさすがにうれしかったけど、確かに自分の中の純度がかなり高い即興をしていることに最近気づきました。

芳垣さんがジャパンツアーのときにドラムで参加していたブラジルの音楽家アントニオ・ロウレイロや昨年少しお会いできたアルメニアの音楽家ティグラン・ハマシアンなんかは、1つ下か同い年ぐらいだけれど確固たる音楽とそれぞれの伝統音楽と向き合った音楽や即興を展開していて、彼らの登場が僕にとってはセンセーショナルですごく刺激を受けています。

その「何か」に近づくヒントというかシンパシーを勝手に感じているのが、今回のテーマ インドネシアの音楽「ガムラン」です。ガムランは研究しだすとものすごく面白い音楽でかなりはまっていますが、古くはドビュッシーがすでに目をつけ、最近では作曲家の野村誠さんが影響を受けて音楽を作っていて、世界的にはメジャーな「民族音楽」だと思います。このとき一方で、民族音楽という言葉自体、「先進国の上から目線である」という言葉がずしんとのしかかります。ここはとても難しいテーマではありますが、少なくともその国それぞれの民族音楽を演奏したいわけではなく、かといって自身の即興演奏に「取り入れたい」訳でもない。純粋に響きとかリズムとかフレーズが自分の中に少しでも共通しているものがあるんではないかと確認したいという思いです。

ガムランにはスレンドロ音階とペロッグ音階の2種類の旋法があるのですが、ガムランを聴く前から自分がこれに近い旋法で即興をしていることがあることに気づきました。「Maboroshi」という曲がそうなのですが、速くなったり遅くなったりするリズムやぐわ~んとした響きなんかがインプロで登場したりするので、身体的に非常に近いものがあるんだろうなと感じているところです。

そういえば、ギタリストの内橋和久さんがインドネシア実験音楽ユニット「senyawa」と非常に刺激的な音楽を作っています。

(実はアンビエントエレクトロニカも僕の中では「手つき」として注目していて、それはまた違う話になるのでここではあまり詳しくは書きません。)

彼らはインドネシアジャカルタです。先ほど登場した作曲家の野村誠さんがブログに詳しく書いてますが、ジョグジャカルタの芸大では、西洋音楽学科というところで西洋楽器のための作曲を教えていて、民族音楽学科というところでは、民族楽器を混ぜ合わせた作曲を教えているそうです。また、伝統音楽学科というところではジャワ・ガムランの作曲を教えて、さらには舞踊学科にまで作曲の授業があり、舞踊のための作曲をダンサー自身が作るそうです。そういった音楽を学ぶ学生がいたり、上記のような音楽が展開されているのはやはりジャカルタであり、今回触れた「バリ・ガムラン」とはまた違うものであることが予想されます。小泉文夫さんの本のコピーを今回旅に持っていきましたが、その本には「即興演奏が多い」と書かれてあります。いわゆる「バリ・ガムラン」ではその要素を感じ取ることができなかったのですが、次の機会ではそこまで踏み込んでいきたいなと思っているところです。