20210202|瞬間のこと

先週くらいから、夜な夜な動画の編集作業をしています。編集ポイントの一つに映像と音のズレの修正があるのですが、その中にもいろいろな発見があって面白いです。

普通のスピードの打鍵だと、秒数でだいたい0.03秒前後のずれがあると違和感を感じます。更に速いスピードで打鍵している場面では、0.015~0.02秒ずれるだけで「ん?」と感じてしまいます。さすがに0.01秒ではあまり違いが分からなかったのですが、本当に集中しきっているときやいわゆる「ゾーン」の状態に入って演奏していると、それでも分かるのかもしれません。

特に即興演奏の場合、その時間に「こう弾こう」だとか「次はこうしよう」などと企てを考得る時間はないですし(いや、予測の元に動いているともいえる)、指が鍵盤に触れる瞬間から実際に次の音に行くまでの脳の処理スピードがどうなっているのか、実感できません。こういう弾き手の感覚は、前から研究対象ともなっていて、実際にその実験にも参加したことがあるので、とても興味があるところです。

しかし音楽家からすると、「情」の動きが分からない限り発せられないのが、人間の手による"音遣い"だと確信しています。例えば、AIにフレーズの特徴からバッハの音楽を研究したり、ジャズのアンサンブルセッションを目指す研究がありますが、もともとの人間の奥底にある「情」との関わりがわからない限りは、「なぜそのフレーズを使った(選択した)のか?」を理解できないと思われるので、どうしても「研究する順番が逆なのでは?」と感じられずにはいられません。もちろんロボットに「嘘をつかせる」研究などの面白いものもあったりして、まじまじと眺めてしまうものなんですが。

深夜に魅力的なプレイの世界の入り口を見たということで、冬おじさんがつらつらと書いてみました。今日も編集作業を続けます。