「まつもと」の映像作品

このご時世に「詩人」として生きるウチダゴウさん。詩人として生きることは生きにくいのではないのか?と、ふと思う一方で、同世代に詩人がいるというのはすごく刺激的です。そしてそんな彼に焦点を当てたショート動画作品を作りました。

映像は、大学時代の同級生である「周波数24/7」が担当。彼が取材で知り合って2年。撮り溜めてきた想いと出来事を、1つは彼の創作活動に視点を当てて、1つは詩の朗読をそのまま作品にしました。

そして僕は音楽を担当しました。曲名は「A PLACE WHERE HE LIVES」。このタイトルはウチダゴウさんの詩のタイトル名でもあり、彼が毎年のように通っているアイルランドを彷彿とさせる英詩の作品をもとにしています。

実はこの音楽は、曲ではなく即興演奏です。昨年の10月に関西に来ていた宮崎真司君とレコーディングをしていた時に、「今からD♭でやってみましょう」と徐ろに始めた即興演奏のテイクを採用しています。したがって、このときにはもちろん楽譜はないし(その後楽譜化しました)、1テイクのみの切り貼りもない音源が出来上がりました。そのすぐ後に同氏の映像作品を作ることになり、この曲のイメージがそのまま空気感としてぴったりはまったという経緯があります。そこには「まさにその時曲が生まれる瞬間」が収められています。

そして、録音は僕の作品には欠かせない五島昭彦氏。映像の中の音にはアンプの音が入っていたり、声を録ったときに含まれる生活音など、たくさんのノイズが含まれていますが、それらを日々の生活と同じ音量感覚で同居させています。

「音楽はなぜこんなにやりにくい時代になってしまったのか?」

この問いは僕の先生の本の一節でもありますが、そういう思いが日々積もっていく一方で、現代を詩人として生きる人がいる。でも僕らは苦しんでいるようで苦しんでいない。今の時代に作る作品とは何かということに向き合いながら、「倚りかからないけれど、寄り添うもの」を作っている。この言葉は、僕が今一番信頼しているコトバです。どうぞ、是非ご覧いただけると嬉しいです。
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『一編の詩が出来るまで』

そしてゴウさんが朗読する「みち」を動画作品にした『GO.』

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撮影・編集・制作:周波数24/7(チャンネル ニヨンナナ)
字・ロゴ・朗読:ウチダゴウ
ピアノ:日吉直行
ギター:宮崎真司
録音:五島昭